次の日も文化祭の準備で、授業はすべて潰れた。
「美優ー! ちょっときてー!」
『はーい! ちょっと待ってー。』
教室の中央で装飾を作っていた私は、後方で作業をしていた、彩乃と椎奈のところへ行った。
「どのくらいの温度がいいと思う?」
そう言って椎奈が指さしたのは、クレープ用のホットプレート。
私のクラスはジューススタンドと、私たちの大好きなクレープと、カレーを売って、フードコート的なものをやることになっていた。
『ちょっとやってみていい?』
「材料もそろってるし、試してみよ!」
3人でいったん手を洗って、教室に戻った。
「それじゃあ美優、やってみて!」
そう言われて、彩乃から生地のタネを受け取って、さっそくクレープ作り開始。
「美優、うまいじゃーん!」
椎奈はビックリしながら言った。
「美人がクレープ作ると、なんでこうも絵になるかねー。」
彩乃は、おばあちゃんみたいな顔をして言った。
『本当? こんな感じでいいのかな? 彩乃顔しわしわだよ。』
だんだんいい匂いが教室に広がって、出来上がったころに、麗花ちゃんがやってきた。
「すごいいい匂い! おいしそうだね!」
かわいい笑顔で、鼻をクンクンさせていた。
『作るの楽しいよっ! 試食する?』
彩乃と椎奈は、あからさまに嫌そうな顔をしていたから、私が答えた。
「いいのー?やったー! 岳ー、ちょっときてー!」
麗花ちゃんは突然、教室の隅で作業していた岳を呼んだ。
「なに、どーした?」
岳はすぐにこっちに来た。
私がいるのをチラッと確認してから、すぐに麗花ちゃんに話しかけた。
「美優ちゃんがね、クレープ焼いてて、いい匂いだから来てみたら、試食してみる?って。試食してみよ!」
「いらない。こんなところで作った物なんて食べたくない。」

