『あーあー、何してんだろ』
人がいないと思い大きい独り言を呟いてみた。
「ほんと、何火傷なんてしてんだよ。」
びっくりして思わず冷やしていた手をひっこめた。
まずい、独りごとを聞かれたと思う前に、聞こえてきた声に耳を疑った。
声のしたほうを見ると、そこには今まさに思い悩んでいた人物、佐野岳が立っていた。
なにも言えずにただ彼を見ていると、「ちゃんと冷やせ。」と言って彼は私の腕をとって一緒に蛇口に手をさらした。
『濡れちゃうよ、手。』
何を言っていいのかわからず、とりあえず気になったことを言ってみたが、岳は気にする様子もなくそのまま一緒に水に当て続けてくれた。
冷やしている間、一言も会話は無かった。
この機会に聞きたいこと聞かないでどうするのよ!
と心の中でげきを飛ばすが全く口が動かない。

