恋愛事案は内密に

寝付けないまま、朝を迎えてしまった。

所長との仲はただの社内の関係だ。

勝手に妄想が広がってくだらない。

言い聞かせば言い聞かすほど、どつぼにはまってしまう。

ただ食事しただけじゃないか。

所長は特別、何か発言したわけでもない。バカみたい。

大和だったらこういうとき、どうだったんだろう、と思い返す。

そういえば、所長とあっているとき、大和のこと何にも思い返せなかった。

どういうことなんだろう。

洗面台にたっぷりの水を張ると、両手で水をすくいばしゃばしゃと音をたてて顔を洗った。

くだらない想いは眠気とともに水に流してしまえとばかりに顔を洗い、同じ様にたっぷりの化粧水と乳液を塗りたぐり、化粧をする。

まあまあな顔になったところで、髪の毛をセットした。

所長の甘く低い声が聞こえてくる。

「よく似合っています」

がさっきからずっと脳裏でリピートしてくれている。

何を期待してるんだろう。

適当にセットして、通勤服に着替える。

外に出ると、路面はぬれてはいなかったが、相変わらず空は雨雲で覆われている。

信号待ちをしている多くの通勤の人たちにまぎれると湿気と熱気のおかげか、せっかく土曜日にきれいに整えた髪の毛も会社についてしまうとしなびて残念な髪型になっていた。

ロッカー室に入って適当に髪の毛を結い、制服に着替えて事務室に入る。

気合いを入れて、少し大きな声を出し、ドアを開けた。

「おはようございます」

すでに皆がそろっている。

ちょうど所長と目があったので、思わず視線をそらした。

「むつみちゃん、昨日はどうもありがとう」

北野さんがごきげんな声で話しかけてきた。