恋愛事案は内密に

「なんでしょう」

所長は数秒、黙っていた。

この雰囲気は大和と一緒にいたときには味わえなかった空気だ。

「……なんでもないです。それじゃあ」

「おやすみなさい」

こんなに別れがつらいなんて、いつぶりだろう。

もう少しいたいという欲求が高まっていた。

振り返ってみる。

すでに所長の姿は小さくなっていた。

部屋について冷静になる。

所長の言葉のひとつひとつが胸の鼓動と重なる。

動揺している。

胸の奥がうずいている。

まさか、そんな。

所長のことを好きになるなんて。

明日、どういう顔して会っていいか、わからない。

年下で、しかも上司なんて。

こんな私のことなんて想うはずもない。

この想いは自分の胸の内にしまっておこう。

そのほうが傷付かなくってすむから。