恋愛事案は内密に

「所長……じゃなかった、五十嵐さん、金曜の帰りは失礼しました」

「なんでしょう」

商業施設のビルから外に出る。

観覧車のイルミネーションの光が暗い水面におち、にじんできれいだった。

「変な目で見ないで、なんて、強く言ってしまって。声かけてもらえるだけでもありがたいのに」

「誤解を与えるようなマネをした僕が悪いんですから」

湿気を帯びた風だが、酔いざましにちょうどいい。

強めの風にあおられ、乱れた髪の毛をかきあげると、街灯に照らされた所長の口角があがっている。

「髪の毛、切ったんですね。よく似合ってます。あの時着ていた黒のドレスに合いそうですけど、今のむつみさんの洋服も好きだな」

「……五十嵐さん」

「誤解を与えちゃいけないって言っておいて変な発言でしたね」

「……いえ、うれしいです」

「それじゃ、おやすみなさい」

「こちらで結構ですので。今日はありがとうございました。明日もよろしくお願いします」

「むつみさん、あの」