恋愛事案は内密に

「えっ」

思わずチキンのソテーを噴き出しそうになった。

あわててビールで流し込んだ。

「変なこと、言っちゃってごめんなさい」

「あやまらなくていいんですよ。恋愛が苦手なだけで」

次々に運ばれてくる料理に舌鼓を打つ。

おいしいですね、むつみさん、と笑顔を交えながら食べる料理はどの料理でもおいしい。

「お酒、すすんじゃうなあ。むつみさんのせいですよ」

そういうと店員を呼び、赤ワインを注文した。

こんなにゆっくりとお酒を味わえるなんて思ってもみなかった。

たわいもない話なのに、所長と話すだけでひとつの料理になる。

コースの最後のデザートとコーヒーをいただいて、さてそろそろ帰りますかと席を立とうとしたとき、所長がぼんやりと座ったままだった。

「五十嵐さん、そろそろ」

と所長を促したとき、所長が突然、右腕をつかむ。

拍子に所長の顔に近づいた。