恋愛事案は内密に

「……え、まだあの、出会ってあの」

所長は、ぷっ、と噴き出す。

「買い物とか、ご飯とかですよ」

「あ、そ、そうですよね。私何言ってるんですかね」

あわててコーヒーを飲もうとして、吹き出しそうになる。

心配そうに所長は私をみていた。

深呼吸して再度コーヒーを飲み干して落ち着いていると、

「さていきましょうか」

と所長が立ちあがった。

所長からふんわりと柑橘系の香りが漂った。

所長に続いてレジに向かう。

会計をしてもらうとき、カバンからお財布を取り出したときだった。

「ここは僕が払わせてください。この間のコーヒーで元気もらえたので」

大きな手で財布を持つ手をふさぐと、自然な流れで私の分まで払ってくれた。

「ごちそうさまでした」

「いいんですよ。僕のキモチですから」

外に出る。

湿度が高いのか、一気に体感温度があがる。

他の人には私たちはどういう風にうつっているのだろうか。

お店のショーウィンドにうつる私たちをちらりと横目にみるけれど、ただの所長と派遣社員にしか見えてこない。