恋愛事案は内密に

「あ、あの……」

「むつみちゃん、ひとり?」

本当は別にもう一人いますといいたいけれど、苦しい言い訳にしかならない。

「ええ、ひとりですけど」

「ちょうどよかった。これからどう?」

「え?」

「ちょうどむつみちゃんの話題をしてたところなの」

「ええ、いいですけど」

「もしかしてここの喫茶店に入ろうとした?」

北野さんは細く長い指で喫茶店の看板を指差した。

「ええ、まあ」

「わたしこの店いったことがないんだ。はいろっか」

そういうと、北野さんが先導を取る。所長が私の後ろに回り、喫茶店の重いドアを引いてお先にどうぞと中に入れてくれた。

コーヒーチェーンのお店よりも重厚なつくりで、どこかのデザイナーがつくったであろう店内の照明も明るすぎず暗すぎず、椅子もゆったりとしたサイズで布や革張りの椅子はどれも座り心地のいいものばかりだった。

店内はボサノバやジャズなどの雰囲気を壊さないBGMが流れていた。

通りに面したガラス窓のある四人掛けの席に北野さんと横並びに座る。

ちょうど所長と向かい合わせになった。三人ともコーヒーを頼んだ。