恋愛事案は内密に

「何でしょう」

所長は目を輝かせてこちらを見る。

「声をかけてもらってありがたいんですが、そんなに声かけてくださらなくても結構ですよ。助けてくださった件はありがたいと思ってますけど。私の気のせいかもしれませんが」

「……思わせぶりな態度をしているならあやまります」

所長は弱々しい口調で頭を下げた。

「所長、頭あげてください。そうじゃないですけど」

「迷惑ですよね。そうですよね」

そういうと、所長は下を向いたまま黙ってしまった。

「これから用事があるので、失礼します。また来週もよろしくお願いします。お疲れ様でした」

所長の顔も見ずに傘を差し、外へ出た。

少し歩いて振り返る。

やっぱり所長はその場に立ち止まり、雨粒で濡れたガラス窓越しに私を見ていた。

笑顔は消えていても、何かをとらえようとする目の力強さは残ったままだった。