恋愛事案は内密に

「所長、お疲れ様です」

「むつみさん、お疲れ様です」

しっかりとあつらえたスーツの肩の部分は雨粒で濡れていた。

乱れた髪の毛を直しながら所長はにっこりとほほ笑む。

「そんなに急がなくてもいいじゃないですか」

「……お疲れ様っていいたくて」

所長は照れた表情を浮かべながら言う。

何を返していいかわからなかったが、すぐさま所長は、ああ、そうだと声を高らかにした。

「おかげで先方とも無事に交渉ができました」

「お役に立てられてよかったです」

それぐらいしか無難な返事しかできるはずもなく、すぐに会話はとぎれてしまった。

黙ったまま所長がじっとみつめるので、しぶしぶ言葉をかける。

「所長、聞きたいことがあるんですけど」