恋愛事案は内密に

「遅刻しますよ」

遮るように立っていたのは、紺色の背広にブルーのネクタイを締めた所長だった。

涼やかな瞳を携えながらまっすぐに私の目を見ていた。

「どうかしましたか? 焦ってるみたいで」

「……あ、いえ」

向かいの道をみる。もう大和の姿はなかった。

「何かありましたか?」

「いえ、ちょっと。早く行かないと」

所長は私の右隣に並び、一緒に会社まで行くことになった。

何を話せばいいかわからないので、黙って前を向いて歩いていた。

視線を感じると、ちらりと私の顔をみていた。

カジュアルすぎたかな、と反省してみる。

「適当な身支度ですよね、私」

「……いや、あの、そうじゃなくて」

「気になりますよね。あとでフル装備しますから」

ニコリと営業スマイルをすると、所長は目を丸くしていた。