恋愛事案は内密に

気がつけば、時計の針が5時を差していた。

「むつみちゃん、お疲れ様」

「森園さん、お疲れ様でした」

机の上の書類を片づけ、勤務表を書き、今日は北野さんにハンコを押してもらうことにした。

「少しずつ覚えてくれればいいんだからね」

凛々しく笑う北野さんに何と返していいかわからず、ありがとうございましたとあいさつし、タイムカードを打ってロッカー室へ向かう。

ロッカー室に一人になったとたん、力が抜けて、頭がからっぽになる。

会社を辞める前まで適当な仕事をしてきたので、久々に頭を使った作業に頭と体がついていかなくて悔しかった。

できると思っていたことが全然できてない。

制服を脱ぎ、持ってきた新しい服に着替え、会社を出る。

明日はミスしないように頑張ろうと気合いをいれたいところだけれど、そんな気力もなく、来たエレベーターに乗る。

別のことを考えよう。

今日の夕飯は何にしようかな。

おいしいものでもつくろうかな、と思うと、頭の片隅にやっぱり大和の笑顔が浮んでしまう。