恋愛事案は内密に

「営業にわたしがうつってからだから、もう何年もないなあ。本社で新人だった頃以来かもしれない」

そういいながらしみじみとおにぎりを頬張る北野さんだった。

「どう? 慣れた?」

「まあまあですかね」

「少しずつ慣れてくれればそれでいいよ。それより、楽じゃない?」

「え?」

「あんまり事務所に人いないこと」

「え、ええ」

「わたしさ、女なのにさ、女の人苦手な人間でさ」

北野さんは食べかけのおにぎりを置いて、ペットボトルを開けて、ゆっくりお茶を飲む。

「本社でいろいろあってね。結局支店勤務で営業にかえたんだけどさ。こっちのほうがあってたっていうね」

「そう、ですか……」

「あんまり詮索しないようにするから、安心して」

「わかりました」

ということは、北野さんのことはあんまり聞かないでっていう言葉の裏返しなのだな。

「麻衣ちゃんも一緒にお昼すればいいのにねえ。まあ、あの子はあの子でしかたないか」

北野さんは、うふふと笑うと、残りのおにぎりを食べた。