恋愛事案は内密に

視線の上には所長の顔が近づいていた。

二重に長いまつげで覆われた瞳がうるんでいる。

私はさっと身をかわし、所長から離れた。

「制服も似合いますが、通勤の服も素敵ですね」

「あ、いや、これは」

さすがに通販でバーゲンに出された洋服ですなんて言えなかった。

所長は黙って私の顔をみつめていた。

「何か、顔についていますか」

「……え、いやあ、あの」

所長は顔を赤らめている。

「森園さんを見たら、何だか目が覚めたような感じで」

「目覚ましか何かですか」

「ああ、変な意味じゃなくて。なんて言っていいやら」

「私はこれで。お疲れ様でした」

私は頭を下げ、駅方向へ歩いていく。

後ろから靴を鳴らしてついてきた。

「あっ、森園さん」

「何でしょう」

「……また明日」

「明日もよろしくお願いします」

所長は名残惜しそうな顔をしていたが、エレベーターの中へ入っていった。