恋愛事案は内密に

以前いた会社で営業サポートをしていたとき、取引先の営業の方が気難しい人が多い中、いつも気さくに対応してくれた人だ。

当時、大和と付き合っていたときも大和の趣味や趣向を教えてくれた。

社外では大和と栗林さんと三人で飲みにいったこともある。

大和との不仲になってからは会社の付き合いとして談笑するぐらいで特にプライベートで親しくすることもなく、退社することは知らせただけで直接挨拶はしなかった。

大和が別の女と付き合うようになったとき、帰り際に、

「森園さんがそのつもりなら、オレ、つきあうよ」

なんて軽々しく言ってくれたので、そこまで困っていませんよと丁重にお断りした。

大和と違って栗林さんはチャラチャラしているけれど、その分真面目で女性に対して真摯にうけとめてくれそうだなあ、という印象だった。

「森園さん、さっきから手動かしてないですよ」

分厚いカタログが同じページでとまっている。

「あ、ごめんなさい」

高清水さんが横でにらみをきかせている。

「あの、高清水さん」

「なんでしょうか」

「栗林さんとはどんな関係なんですか」

「この支社にいた上司ですけど、何か」

「あ、そうでしたか」

「無駄口たたいてないで、やるべきことはちゃんとやってください」

「……わかりました」

また栗林さんという名前を出すと、高清水さんの目が丸くなり、少し頬がピンク色になっていた。