恋愛事案は内密に

「ご無沙汰してます」

栗林さんはニコリと笑う。

横にいた高清水さんが口をとがらせている。

「栗林さん、森園さんのこと、知ってるんですか?」

「ああ、以前いた会社の営業先。よく営業の人に取り次いでくれてたもんね」

「え、ええ」

栗林さんは大和と大学時代からの友人だ。

高清水さんの顔は曇っている。

「まさか君がここの社員になるとはね」

「え、ええ」

「そういえば、大和と何かあったんだっけ」

「そのことは……」

「ああ、ごめん。つい、いろいろ聞いちゃう」

あはは、とから笑いする栗林さんだ。

以前の会社でも困ったときはいつもそんな笑いをしていたことを思い返した。

大和の女性関係をそれとなく聞いたときも笑ってごまかしていた。

「麻衣……じゃなかった、高清水はけっこう仕事できるし頼りになるから」

「はい」

「本社に戻らないと。それじゃまた」

栗林さんはお騒がせしましたと小声でつぶやいて支店から1時間くらいの場所にある、本社へ戻っていった。

事務室のドアが閉まると、はあ、とため息をつき、高清水さんは自分の席につく。

「ずいぶんと仲がよかったんですね、森園さんは」

ぶつぶつと文句をいいながら、高清水さんはパソコンのキーボートをバンバンと大きな音をたてながら打っていた。