恋愛事案は内密に

郡司が帰ってから北野さんにメールを出し、次の朝、北野さんと顔を合わせる。

「おはようございます!」

「五十嵐さん、だから、ドアを強く開けないでって何度も言ってるじゃないですか」

「あ、ごめんなさい、高清水さん。気を付けます」

高清水さんはむすっとしながら、就業前の準備として机のぞうきん掛けをしていた。

「北野さん、お願いがあるんですけど」

「何?」

北野さんは机いっぱいに資料を出し、パソコンでまとめている最中だった。

「あの、昨日メールしたんですけど、読んでいただけましたか?」

「ああ、人材確保のお願いね。チェックしてあるわよ」

「駒形部長と相談して、一人補充しようと思ってるんですけど」

「うん」

「一人見つかりましたが、あいにく顔合わせの日、どうしてもはずせなくて」

「いいわよ。午後でしょ。空くから」

「ありがとうございます」

ゆっくりと頭をさげると、北野さんは資料をまとめていた手をとめ、ニコリとほほ笑んだ。

「ようやくほっとした顔、みせてくれたわね」

「えっ」

「しっかりやりなさいよ、所長」

「はい!」

元気をもらえた気がした。

やっぱり北野さんはまっすぐな人だ。

心の中に爽やかな風を通してくれる。

満たされた気分で自分の席に座ったのに、僕を冷ややかな視線を送るのは高清水さんだった。