恋愛事案は内密に

夜19時過ぎ、仕事が片付いたところで郡司がウチの会社に現われた。

「よお。お疲れ」

「お疲れ」

会社の小さな応接室に通す。

少し疲れている表情を浮かべているけれど、こちらも同じように先方との交渉で疲れていたから同じに見えるんだろう。

「一人ちょうどいい人材いるけど」

そういって郡司はカバンから資料の入ったファイルを取り出し、見せてもらった資料に唖然とする。

「どうした。五十嵐」

「ううん」

写真を見る。

バーのトイレ前の通路で倒れていた人に似ている。

「この人、五十嵐の会社の取引先に在籍してるね。確か担当は栗林さんだったかな」

「そうなんだ」

「ただちょっと年齢的に上だけど、どうする?」

「他には?」

「うーん、未経験者の若い子がいるけど。即戦力でいけば彼女がいいんじゃないかな。話わかりそうだから」

「考える時間はないし、研修もあるからなあ。その人でお願いできるかな」

「了解。で、顔合わせなんだけど」

「ごめん、大事な案件があって、どうしても外へ出ないといけないんだ」

「そっか。時間調整できたら早いうちに契約しないとさ、他の派遣に行っちゃう場合があるんだけど」

「僕じゃなくても大丈夫?」

「代理で他の人でもいいけど」

「わかった。あとで詳しいことはメールで連絡するから」

「よろしく。契約書とかあと顔合わせの資料はまたあとで送るから」

写真のあの人は、森園むつみさんていうんだ。

二重まぶたに、きれいな唇をしている。

直接会いたかったけれど、仕事にはかえられない。