恋愛事案は内密に

営業の移動中の時間の合間を縫い、あるところへ電話をかける。

「五十嵐だけど」

「おう、五十嵐。元気にやってるか」

「頼みごとがあるんだけど」

「女の紹介か? 今そういうのは受け付けてないんだけど」

「そうじゃなくって。仕事の話」

「冗談だよ。で?」

「一名人材を探してるんだけど」

「そっか。探してみる。あとでおまえの会社行ってもいいか?」

「ああ。外へでなきゃいけないから。遅くなるけど」

「わかってる。じゃあ、またあとでな」

電話を切った。相手は学生時代からの友人、郡司だ。

しっかり者のあいつは面倒見がいい。

だから人材派遣の営業に向いたのだろう。

東京からこの土地へ異動になったときに何度かメシを食いに行ってよく人材派遣の仕事の依頼があったら連絡くれよと営業をかけられたものだった。

高清水さんも紹介派遣として紹介され、今ではウチの会社の契約社員になっている。

正社員になろうと日々努力していると北野さんから聞いていた。

郡司の洞察力は一流なのか、この地区の営業成績は一位と自分で自慢していた。

人材派遣の会社へ訪問したときも、初めてこの派遣会社にやってきた人や女性従業員への配慮の仕方が柔軟で、相談といっては近づく人間が多かった。

のらりくらりと人の相談ごとをクリアし、無理そうならかわしていくところは学生時代とは変わらないから、天職なんだろう。

それでも人を見る目があるのか、自分の利益を主張する媚びる人間には冷たくあしらっている。

そういう考え方のできる郡司がうらやましたかった。