恋愛事案は内密に

「そういえば、ウチの営業所に一人増やすんでしょ」

「そのつもりでいます」

「わたしが連絡しておこうか? 派遣会社に」

「いえ、僕が連絡しておきますから」

「そう。また何かあったら相談してちょうだいね」

「はい。その時にはお願いすると思いますので」

やっぱり堅苦しくなる。

まだ北野さんとのことで引きずっている自分がつらい。

「ライバル社の動きが気になるので、恋愛どころじゃないですから」

「頼もしいわね。所長」

くすっと北野さんが笑う。

赤信号で停車していたとき、ちらりと横顔をのぞくと、まっすぐ前を向いている。

これからもこの先も北野さんは自分の道へと進むような、表情をしていた。

僕も北野さんのようなまっすぐ突き進める度量が欲しい。

その前に今与えられたポジションで結果を出して自信をつけたほうがいい。

いつか理想の女性が現れる前に自分を磨かないと。

営業所の入っているビルの真横に車をつけた。

「北野さん、どうぞ。駐車場に入れるんで」

「うん。お先に」

降り方もスマートできれいだった。

車を駐車スペースに入れ、営業所へ戻ると、北野さんの姿はなく、高清水さんが残って作業をしていた。

「北野さんなら資料持って外へ行きました」

淡々としたしゃべりをしながら、パソコンに向かう。

仕事はできるほうなんだけれど、初めて会ったときから妙な感じがして慣れない。