恋愛事案は内密に

「栗林さんは順調でいいですね」

「営業成績はお前のほうがいいじゃねえか。こっちは困ってるんだって」

「え、どうしてですか」

「営業先の女の子がやめちゃってさ、次の引き継ぎの子が微妙な子で。話がかみ合わなくて。その人、かなり頑張ってくれてた人だったのに残念だったなあ」

「そうだったんですか」

「まあ、日頃磨いた営業トークでカバーできるところを探さないとな。どんどんお前に抜かれちまう」

「もう恋はいいんで、仕事に打ち込みますから」

「その勢いだな、所長」

背中をバンバン叩き、栗林さんも商談があるからと外へ向かった。

僕もそろそろ外へ出ようとしたとき、北野さんがこちらに向かっていた。

「営業所まで乗せてってもらえないかな」

「……わかりました」

あいかわらず凛としたその格好、しぐさは見ていて気持ちがよかった。

北野さんと二人っきりになったのは、あのバー以来だった。

車内は緊張で空気が張り巡らされているようで息苦しい。

しかも助手席に座ったものだから、窓を開けようとしたけれど、まだ寒さが残る季節に酷だなと思い、やめておいた。

「顔に出てたわよ」

車を営業所に走らせているとき、北野さんはぽつりとつぶやいた。

「……そんなつもりじゃ、なかったんですけど」

「そういう素直なところは別の人に見せなさい」

「わかりました」

「わたし以外にいい人みつかるよ。五十嵐くん男前だから」

「ありがとうございます」

ついつい営業トークのトーンで話してしまう。
きっと北野さんもわかっているんだろうけれど。