「さて、どうします?」

息も絶え絶えで何も考えられないぐらい、頭がぼんやりする。

それなのに体の芯は熱く、早くこの熱を冷まさせてほしいと願う。

「いっ、五十嵐さん……」

「そうですね。いい考えがあります。新しいプランの手はじめとして、下の名前で呼んでもらいましょうか」

「下の名前、ですか」

大和のときは私から強引に向井さんから大和に言い方を移行していったけど、所長から提案されるなんて考えてもみなかった。

「僕の下の名は政宗といいます。あの伊達政宗と同じですよ」

まさむね、所長に似合った名前だな、と心の中でつぶやく。

「さあ、どうします? 続けましょうか?」

「政宗さん、お願いしても……」

「困った人だ」

優越感に浸るような顔をすると、所長はまた私の唇をふさぐ。

所長の指先で私が壊されていく。

殻が破け、新しい私がふ化していった。

気がつくと、所長は私のそばでニコリとやさしい笑みを送っていた。

「とろけてますね」

「政宗さんが……こんな風にしたんじゃないですか」

「責任とりますよ」

ようやくネクタイをはずした。

手首が解放されると今度は所長がやさしく手をつないでくれた。

私を壊した手はとても温かい。

内鍵をはずすと、私を先に試作室の外の廊下へ出してくれた。