恋愛事案は内密に

所長は少し照れながらも私の姿に見入っていた。

「そんなにジロジロ見ないでくださいよ」

「見とれてしまう。やっぱりきれいだ」

「あんまり、このドレスは着たくなかったの」

「そうですか」

眼鏡越しに見せる所長のやさしい瞳にときめいてしまう。

自宅マンションを出て、駅方面へと足を進める。

「どこへ行くんですか?」

「僕たちの始まりの場所です」

駅前のコンビニの前で私の足が止まった。

駅前ということもあり、人の往来が激しい。

後ろから歩いてきた男性にぶつかりそうになり、チッと大きく舌打ちされた。

あわててコンビニの隣のシャッターがしまったお店の前に避けた。

「どうしたんですか」

「行きたくないんです」

「どうして?」

「いい思い出、なかったから」

「……まったく、むつみさんは」

所長が手を引き、コンビニの脇にある細い路地に連れていかれた。

あたりはうす暗く、コンビニで使われているプラスチックのコンテナが積まれている。

「これからたくさん僕がいい思い出に塗り変えますよ。それでもダメですか?」

「所長……、あっ」

「今、所長って言ったでしょう。困った人だ」

そうして頬に軽くキスをした。

「外でこんなこと」

「ホントは唇にしたかったんですが。軽いお仕置きですよ。こんなところじゃ、もったいないですけど」

クスっと所長は笑い、私の手をとると、路地を抜けて、バーのあるホテルへ足を進めていった。