「所長判断だから。それに従う。いいわね」

「……北野さん」

「とりあえず、事務室に戻って」

北野さんが事務室の扉を開けてくれ、自身の席に座る。

高清水さんは私をにらみ、机を叩いた。

「どうして試作室に行く必要があったんですか! あたしでさえもちゃんと許可を得ないと入れないんですよ!」

「麻衣ちゃん、起きたことは仕方が無い。ウチの営業所のセキュリティーが甘かっただけ」

高清水さんは北野さんのなだめる声を無視して、また机を叩く。

「北野さん、だから派遣じゃなくて、正規雇用にしたらよかったって、反対したじゃないですか」

高清水さんが声をさらに荒げる。

「麻衣ちゃん……」

北野さんも言葉を失っていた。

「あとでちゃんと派遣会社に連絡を入れます」