恋愛事案は内密に

「二人ともさっさと帰ってしまうなんて」

所長と並んで歩き、駅までの道までなんとか気持ちを落ち着かせながらここまでこれた。

「それでは、私はそれではここで」

「……酔ったみたいです」

所長は駅の改札口近くの柱に背中を寄せていた。

「え」

「お水、もらえませんか?」

「えっ」

「家までもたないかもしれません」

「あ、あの」

「ダメですか?」

所長は苦しそうに顔をゆがめている。

「……いいですけど。汚いですよ、部屋」

「構いませんよ」

しぶしぶ駅の北口に待機していたタクシーに乗り込み、自宅マンションまで案内した。

いたって普通の1LDKのマンションで、玄関を開けて中に入ってもらった。

廊下を渡り、リビングに通す。二人掛けソファに座ってもらい、冷蔵庫からペットボトルの水をもってきた。

「あの、飲んでください」

「ありがとうございます」

ちんまりと座っているけれど、背が高いので自分の部屋なのに違和感がある。

「ではちょっと」

というと、突然横になってしまった。

「あ、あの、五十嵐さん」

こんな大きな人を動かせるはずもなく、しかたなく布団とまくらを用意した。

「狭いですけど……」

所長はスーツのジャケットを脱ぎ、ネクタイをはずすと、器用に横にごろんと転がるように布団にまるまり寝息をたてた。

男性の眠る顔はどうして安心できるんだろう。こっちまで眠くなってしまう。

久々に男性の匂いのする部屋で眠る心地よさは格別だった。