恋愛事案は内密に

「お疲れ様です」

「お疲れ様です。なんだか今日は物足りない気分でした。朝、会えなかったんで」

「……所長」

「帰りに会えてよかったです」

営業で重そうな黒いカバンを手にしながら、疲れているのにもかかわらず、笑顔を絶やすことなく接してくれることにありがたい。

「高清水さんから、会社のみんなで飲みましょうって誘われました」

「えっ、ホントですか! あとで聞いてみますね」

所長は、うれしいなあ、この後の仕事、頑張れそうですと声がはずんでいた。

「それじゃ、私はこれで」

「また明日。お疲れ様でした」

軽く頭を下げられたので、私も同じく頭を下げ、帰路につく。

所長のうれしそうな声や顔が頭から離れない。

毎日会っているのに、いつも新鮮な気持ちにさせてくれる。

この所長に対する気持ちは何だろう。

大和には感じられなかった、特別な思いが心の奥底からあふれている。

この気持ちは好きなんだろうか。

でも相手は年下だし、仕事先の上司だ。

恋愛ごとで迷惑なんてかけたくない。

そう思っていても、所長の言葉やしぐさが気になってしまう。

どうしよう。まともに顔を合わせられない。