恋愛事案は内密に

今朝は珍しく、ベランダからは晴れてはいるものの、湿気たせいか、薄い水色の空がひろがっていた。

身支度を整え、外へ出る。

気温は昨日より高くなり、少し歩いただけで首筋から背筋にかけて汗が流れる。

会社のビルに近づくにつれ、所長の言葉が体の奥底をつっついているようで、何だか苦しくなる。

ビルに入り、エレベーターを待つとき、もしかしたら所長が来るのかもしれないと思っていた。

けれど、結局出会うことなく、普通に会社の扉を開く。

何をそんなに期待してるんだろうと、冷静になりながら制服に着替え、高鳴る胸をおさえつけながら、事務室へ向かう。

「おはようございます」

「おはようございます」

挨拶をかわす事務室には北野さんと高清水さんの二人だけだった。

「あ、五十嵐くんは早めに出ていったから」

そういうと、コーヒーの香りを漂わせながら北野さんが説明してくれた。

「昨日は一日、研修に参加することができて勉強になりました。ありがとうございました」

北野さんに言うと、うん、と軽く頭を下げた。