恋愛事案は内密に

駅から電車に乗ること30分。

それからバスに乗り、本社社屋に着いた。

山間に不釣り合いの近代的なビルがそびえたっている。

社長がこの土地の出身ということもあり、数年前に本社と工場をこの地へ移転したそうだ。

おかげで人口が増え、公共事業関係も増えてきたのか、真新しい道やまだ植えたばかりの街路樹が広がっている。

ひとりで心細かったけれど、本社入口にはたくさんの選ばれし社員の人達が集まっていたので、営業所代表として気合いを入れた。

本社社屋前のゲートでセキュリティチェックを経て、本社玄関脇の通路にしつらえた受付にはすでに多くの社員が集まっていた。

順番を待ち、受付に立っていた事務服を着た女性に名前を聞かれたので答えた。

「濱横営業所の森園さんね。C班になります」

そういうと、名札と会場案内、電話講習のパンフレットをもらい、受付奥の部屋へ行くように指示される。

多目的ホールということもあり、体育館の半分くらいのスペースに椅子とテーブルが並べてあり、それぞれの班ごとにプラカードが机の上に掲げられていた。

C班は入口から入ってすぐの場所にあった。

入口近くの席に一人の男性が座っていた。

「あんたが、森園さんか」

白髪混じりに、少し日に焼けた肌。

ちょいワルおやじというあだ名がぴったりな人だった。

そういえば、この人どこかで見かけた。

一週間前、北野さんと一緒にいた人だ。