恋愛事案は内密に

「どうしたら、忘れることができるんでしょうね」

ごめんなさい、お先にと付け足すと係員さんが扉を開けた瞬間にするりと観覧車から外へ出ていった。

あわてて私も観覧車を降りる。

もう地上にいるのにふわふわしている。

観覧車を降りてから所長は何も発しない。

しかたなく所長のあとを追うように後ろを歩く。

観光客の人達が私たちを追い越していく。

海に近い公園の看板がみえ、空いていた白いベンチに腰掛けたのであわてて少し間をとって隣に座る。

「……五十嵐さん、観覧車乗ってしまってすみませんでした。そんなに嫌いだったら言ってくれれば」

さっき乗った観覧車と船の旅客ターミナルの中間にある公園は観光地のひとつだ。

曇っているけれど雨は降っていなくて、多くの観光客が停泊している船とともに写真撮影をしている。

「克服できると思ったんですよ。むつみさんとなら」

所長は目の前に広がる鉛色をした海をみている。

数匹のカモメが海上に漂っていた。

「変えようという気持ちにしないとダメですね」

所長は、すくっとベンチから立ち上がった。

さっきまであんなに震えていた所長だったのに、いつのまにか普通に戻っている。