恋愛事案は内密に

「何考えてたんですか」

「昔の思い出をちょっと。ほんのちょっとだけ」

「目の前に僕がいるのに」

声は少し震えているものの、芯の通る声にこちらの心が震えた。

「距離なんて縮まるわけないですよね。こんな観覧車の中じゃ」

ようやく地上が見えるようになって所長は口を開く。

「地に足がつかない状態で気持ちなんて計れない」

両膝に軽く置かれていた手は、ぐっとこぶしを握っていた。

「よくわかりました。まだ心の中にいるんですね」

「えっ」

「やっぱり」

ようやく係員さんが見えるようになって握りこぶしを解いた。

「忘れられないんですね」

少しだけ所長の顔が近い気がした。

メガネからみる瞳は怒っている。

たまらなくなって視線をはずした。