臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

「この技は、もう少し後に教えたかったんだがな」

 梅田は、ボヤキながら一年生達に指示を出した。

「これからお前らに新しいワンツーを教える。形式練習のようにペアを組んで向き合って構えろ」


 梅田からグローブを返してもらった康平は、再び有馬と向かい合う。

 梅田が言った。

「どっちでもいいが、ジャブを伸ばした状態で止めていろ」


 健太と白鳥のペアは健太の方が、康平達は有馬が先にジャブを伸ばした。

 梅田は健太と有馬の立ち位置と、左ジャブを伸ばす場所を修正した。

「これからワンツーを打つ時、ワンはここに打て!」

 有馬は康平の右側に位置を変えている。そして、左の拳は康平の頭上に延びていた。

 頭上というよりも、康平から見てやや左上と言った方が正しいかも知れない。

 ただ、康平には全く当たらない場所である。