臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

 その後康平は、今まで習ったように拳を額に付けて手首を少し曲げるブロッキングをしたので、顔に衝撃を受ける事はなくなった。

 ラウンド終了の合図をした梅田は、全員に言い聞かせた。

「さっき言った事と矛盾するが、今のような返し技は来年の春位までに実戦で使えればいいから、焦る必要はねぇんだぞ」


 次のラウンド、康平は有馬とコンビを組む。

 有馬のパンチは強くないが非常に速い。彼は身長こそ百七十センチを超えているが、体重は五十キロ程度だ。

 白鳥も同じ位の体重だが有馬よりパンチが遅い。ただ彼のパンチは、体の芯に響くような重みがあった。


 有馬が打つワンツーストレートは、「パパーン!」と一気にくる感じだ。


「ちょっとお前ら、練習を中断しろ!」

 康平と有馬を見ていた梅田が四人を集めた。