臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

「ゴホン! と、とりあえず次は白鳥も打ってみろ」

 康平に続き、白鳥も飯島のミットに左ボディーブローを打つ。康平と同様、左ボディーブローを打った時に左側へ重心が偏り、右ストレートでの追撃は打ちにくそうである。

 飯島に訊かれて白鳥も答える。

「僕も右ストレートは打ちにくいです」


「二人共、左ボディーを打った後は右ストレートが打ちにくい訳だ」

 康平と白鳥は素直に頷いた。


「……とすると、どのパンチだと追撃できるんだ?」

「…………」

「ミットを受けている俺から見ると、左ボディーを打った時のお前らは左側へ重心が寄っていたんだよなぁ。……出来れば次に打つパンチで、重心を元に戻させたいんだよ」

 沈黙している二人へ、飯島が助け船を出した。


「……左フックですか?」

 白鳥が自信無さげに言った。