体育館の壁際で、この様子を見ていた三人のボクシング部員がいた。有馬と白鳥、そして三年の石山である。

「ぶっ、康平の奴、白鳥みたいにボールを避けてやんの」

 有馬は吹き出しながら言った。白鳥は無言のまま、同情するような目で康平を見ている。


「そんなに笑うんじゃねぇぞ! あれは去年の俺の姿なんだからよ」

 石山が苦笑しながら言った。

「す、すいません。……でも先輩は、去年ソフトボールに出てたんスよね? バスケとは関係無いんじゃないんですか?」

 有馬は恐縮しながら質問した。

「同じなんだよ! ……去年俺はソフトでショートを守っていたんだが、最終回俺にライナーが飛んできてダッキングしてしまったのさ。……それがランニングホームランになってサヨナラ負けだよ」

「……悲惨ですね」

「その頃部活でダッキングを多用してたからな。……白鳥と高田(康平)は、最近ダッキングの練習をしていたよな?」