健太は平然として答える。

「でも、コイツがこの時期に宿題終わるってありえねぇ事だしさ。……それに、俺と康平が家で勉強すると三十分が限度だしね。あとの何時間かは気分転換……ていうか、現実逃避しまくりなんだよな。……康平もここでの勉強は楽しかったんだろ?」

「勉強自体はまだ好きになれねぇけど……ここは楽しかったと思うかも……」

 康平は自信なさげに言った。


 綾香が笑う。

「アハハ、亜樹といるのがそんなに楽しかったんだ」


「……康平、数学の教科書持ってる? 君が本当に勉強が好きでここに来れるようになるまで、今から苦手な数学をミッチリやるわよ。明日からもよ。……分かったわね」

 亜樹は持ってきたペットボトルを殆んど飲まずに机に戻って行った。



 その日、亜樹に散々しごかれた康平は、いつもより勉強が辛く感じてしまっていた。