臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

 全員が相手方コートに進む。


 センターライン近くで、村田がドリブルをしている。

 ゴールの左サイドには、ロングシュートを打つ為に山根がいた。

 亜樹は麗奈と同様に、ゴール下近くで時折位置を変えている。

 長瀬には決まっているポジションが無く、彼の判断で自由に動いていい事になっていた。

 その長瀬がゴール近くに切り込み、ディフェンスを引っ掻き回しにかかる。前半彼の活躍が目立っていた為か、それにつられて相手方ディフェンスは少し小さくなった。


 右サイドには康平がいた。試合開始から殆ど活躍していない彼は、この時ノーマークになっていた。

 右手を挙げた康平に村田がパスを出す。彼女は、康平が右手を挙げるのを待っていたようだ。

 ボールを貰った康平はシュートを放った。亜樹と二人で練習していた左手を添える綺麗なフォームだ。

 ボールは音を立てずに直接リングの中へ入った。見事なスリーポイントシュートである。