臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

 再び村田が口を開く。

「さっきもそうだけど、三組は急いで攻めてる感じだよね」

「こっちは麗奈様がいるからな。……こっから先は、ボスに答えて貰おうぜ」

 亜樹を見ながら長瀬が笑って答えた。普段は無口な彼だが、今日はいつもと違って舌が滑らかに動いていた。


「ボスって何よ! ヒッドイわねぇ。……三組の攻撃が早いのは、こっちのゾーンが整う前に攻めたいのよ。ゾーンが出来ちゃうと、麗奈にリバウンドでボールを取られる時が多いからね」


「なぁるほどね! それにこっちは、麗奈様と別に亜樹様もいるから心強いわね。……中澤君もシュートを決めたとなると私も頑張らなくっちゃ」

「敦子(山根)は楽にシュートを打てばいいんだからね」

「狙っても入らない事位は分かってますってぇ。景気付けに言っただけだから心配しないで。私は亜樹様を信じて無責任にボールを放り投げるからヨロシクね」

 からかい気味に話す山根に、亜樹は諦めた表情で笑っていた。