臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

「ちょっとぉ、様なんて付けないでよ」

 亜樹は苦笑いを通り越し、半ば呆れ顔になった。


「試合は互角っぽいよね」

 山根の左隣にいる短髪の女子がボソっと話した。名前を村田夏美(むらたなつみ)といい、バレー部員である。亜樹や麗奈には及ばないが、身長が百六十センチ後半で女子にしては背が高い方だ。


「そうだね! でもまぁ大丈夫なんじゃねぇの?」

「まさか、自分が出るからっていう理由じゃないでしょうね」

 楽天的に話す長瀬へ、学級委員の山根が覗き込むような姿勢でからかった。


「そこまで自惚れちゃいないよ。ただ、三組にキャプテンらしい奴がいないと思ってさ」

「あっ、言われてみるとそうかも。女バストリオの連携はいいんだけど、他の二人には誰も仕切っていない感じだもんね」

 バレー部の村田が感心した顔で話す。