臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

 その後両チーム二本ずつシュートを決め、四対四になっていた。


 三組は速攻で追加点を挙げた。攻守が入れ替わったが、一組は攻めあぐむようになった。三人いた女子バスケ部員の一人が、麗奈に付きっきり(オールコート)でマークをするようになったからだ。

 麗奈の動きに制限がかかり、パスが出しにくそうである。

 亜樹がわざとノンビリとした口調で二人に声を掛けた。

「中澤君とコニちゃん(小谷)はラインにこだわらなくていいからねー」

 二人は、麗奈がパスを出せるように動いてはいた。だが、『スリーポイントシュートを打つ役目』を忠実に守ろうとして、そのラインに沿って動いていたのだ。二人共余裕の無い表情だが一瞬親指を立てた。

 中澤は左サイド、右サイドでは小谷が、空いているスペースを探して位置を変える。

 麗奈が右に回り込んだバレー部の男にパスを出す。彼は切り込むフリをして、やや後方にいる小谷にヒョイとボールを渡した。

 小谷はすぐにシュートを放った。康平と違い、彼女は喉元から両手を突き出すようなフォームでボールを手放していた。