「僕達にそういう日は無いですよね?」

 康平の質問に飯島は即答した。

「当たり前だろ! お前らはまだ習った技の種類が少ないんだからな。……まぁ二年になったらあると思うがな。早く自由練習出来るように、さっさと練習始めるぞ!」

 飯島に急かされた康平と白鳥は、準備運動からシャドーボクシングへと練習を進めていく。


「頭の振り方はまだ慣れないようだが、まずは高田からミット打ちだ!」

 ラウンド開始のブザーが鳴り、康平のミット打ちが始まった。

 ミットを構える飯島を見た康平は、少し違和感を覚える。普段のミット打ちも、踏み込みを良くする為に遠めから構えていたのだが、今回は更に遠くで先生が構えていた。

「どうした? この構えをしたらジャブを二発打つんだろ」

 飯島は左ミットを前に出し、右ミットは口の前に構えている。ただ、康平から見たら手前にあるはずの左ミットも、彼の頭から一メートル半近く離れていた。