臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

 スリーポイントのラインに立った康平は、先週と同じく、右の鎖骨辺りから両手で押し出すようにシュートを打つ。

 放たれたボールは、ネットにカスって壁の方へ転がっていった。

(俺が打っても殆んど入んないんだけどな)

 口に出すと亜樹に怒られそうだったので、康平は心の中でボヤいた。


「惜しいわね! じゃあ今度はパスを貰ったらすぐに打ってみて。……次はリングじゃなくて、バックボードの小さい四角の枠を狙ってみてよ」

 ボールを拾いにいった亜樹からパスを貰った康平は、すぐにシュートを打った。

 今度も入りはしなかったが、ボールはボードからリングに当たり、コートの中を転々としている。


「いい感じだよ! あれだったら私と麗奈がリバウンドを取りにいけるからね。……でも少し気になる事があって、今から試してみるけどいいかな?」

「……別にいいけど」

 康平は戸惑いながら返事をした。