臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

 意表を突かれた発言で目を丸くしていた二人に、飯島は話を続けた。

「前に出ながら頭を動かす時はなぁ、自分で左の膝がカクンと抜ける感じにするんだよ。さぁ、ラウンドの途中だが練習再開だ!」

 康平と白鳥は、膝カックンされた感覚を思い出しながらダッキングをした。

 今迄と違い、二人の頭の位置がクイッと勢いよく変わった。

「よーぉし、いいぞぉ! この感覚を忘れないように、前進だけのシャドーを五ラウンドだ!」



 全ての練習が終わり、康平は飯島に質問した。

「ボクシングに戦うタイプってあるんですか?」

 離れていた所で柔軟体操を終えた白鳥も、康平の質問には興味があるようで、二人のいる場所へ駆け寄った。

「あちゃー、やっぱり質問してきたかぁ。ボクシングの入門書には、ボクサータイプ・ファイタータイプ・ボクサーファイタータイプの三種類が書かれているんだがな。……大雑把に言えば、ボクサータイプは離れて戦うタイプで、ファイタータイプは接近して戦うタイプだ。それからボクサーファイタータイプが両方含めたタイプだな。……但し、あくまで入門書でのタイプ別なんだがな」

 飯島は、少し困ったような顔で説明した。