臆病者達のボクシング奮闘記(第二話)

「バカヤロー! そこはワンツーじゃなくて右、左、右だ!」

 スパーン!

 二人は、女子バスケ部を見たい気持ちを押さえて怒鳴り声の方に目をやると、有馬がミット打ちで梅田から頭を叩かれていた。

 不思議な事に、有馬は叩かれる理由を納得しているようで、叩かれながらも集中して構えている。

 その構えも今までとどこか違っていた。


 興味深く並んで見ていた康平達だが、突然白鳥の頭が低くなる。

 何事かと思っていた康平も、膝の力が抜けてカクンとなった。

 驚いた二人が後ろを振り返ると、飯島が両膝を突き出して笑っていた。

「ハハハ! 俺の膝カックンは見事に引っ掛かったようだな」

「せ、先生! いきなり何をするんですか?」

 康平の抗議にも構わず、飯島は話し始めた。

「これはお前らに教える為、ワザとやったんだよ」