マスボクシングはスパーリングに近い実戦練習の事だが、寸止めで行うのでダメージの心配はない。

 先輩達がマスボクシングをする様子を度々見ていた一年生達だが、素朴な疑問が湧いていた。

(なぜ、自分達はしないのだろう?)


「先生、マスボクシングは実戦に近い練習なんですが、一年生はまだやらないんですか? 少しは実戦の感覚を身に付ける事ができると思うんですけど……」

 健太が堪らず質問をした。

 こういう時に先頭きって質問するのは健太である。そのタイミングが悪くてミットで叩かれる時もあるが、他の三人の気持ちを代弁している時が多いので、康平達はかなり助かっていた。


 飯島が言った。

「話せば長くなるから結論だけ言うが、うちはスパーリングに慣れてきてからやらせるつもりだ。……それより女バスの前では俺からミットで頭を叩かれんなよ。……今日、同じ体育の田嶋先生から苦情を言われたんだよ。あまりうちの部員達を笑わせないでくれってな!」