「美優花、鳴らよ。いいかい?」
おばあちゃんがインターホンに指を置く。
「うん」
しっかりと頷いて見せると、おばあちゃんはゆっくりとインターホンを押した。
チャイムが家の中に鳴り響く。
暫くしてから、中から騒がしい物音がして、ゆっくりと扉が開いた。
隙間から顔をのぞかせたのは…お母さんだった。
「……おかあ、さん?」
お母さんがおばあちゃんを見て驚いたように言った。
そのあと、私を見て顔を歪ませた。
「……美優花。あんたお母さんの所へ行っていたのね…」
何回も見た、お母さんの顔。
怒っている時の、自分に不都合なことがあった時の顔。
「スミレ。話したいことがあるから上がらせてもらうよ」
スミレ。おばあちゃんがお母さんをそう呼び、じっと見つめる。