「ごめんなさいっ」
素直に窓辺から離れると、
「…ども」
小さな声でお礼を言ってくれた。
だけど声が少しくぐもっていた。
「もしかして、風邪ならこれどうぞ」
のど飴を渡してその場を離れた。
(クールな人…。センセーみたいにチャらい感じでもないし。
奏平みたいに元気系じゃない。
あたしの理想はぴったりだけど、センセーがいるもんね)
振り返らずに走った。
そして、あっという間に土曜日。
「あれ、あいちゃん。優衣は?」
奏平と一緒に現地場所に行っても優衣の姿はない。
だけどすぐにメールが届いた。
「あ、トイレみたい」
「あちゃぁ、初デートみたいな空気だもんなぁ。
何せ相手は冷徹な野郎で、何考えているのか不明」
「悪かったな」
振り返ると、昨日放課後にのど飴をあげた人がいた。
「…のど飴のオンナだ」

