「何もあらへん。じゃあまた放課後」
あたしは振り返らない奏平の後ろ姿が気になった。
「…あれぇ。あいらちゃん、今日マネージャー行くの?」
優衣が冷たい視線を向けていた。
あたしは頷いた。
「そうだよ」
「…気に入らない」
「それは奏平が好きだから?」
「そうだよ、あんたなんて。別に彼がいなくても、いいんでしょ?
彼氏じゃないんだから、くれたっていいじゃん!」
大きな声が教室に響いた。
奏平にもきっと聞こえているだろう。
「何で…?」
「は?」
息を切らすように、優衣は問い返した。
「奏平はモノじゃないんだよ。彼氏じゃなかったら傍にいちゃ、ダメなの?」
「…」
だんまりした優衣を悲しげに見つめた。
「もうちょっと、皆のことを考えようよ」
あたしの声はとても弱弱しくなっていた。

