「何ならさぁ」

いつの間にか、あたしのケータイを持っていた。

「メアドくらいはいれていーよな?」

「はい…」

「じゃあ、またガッコで」

「さよならっ」

家まで走った。彼のバイクが鳴り響く。

(危ない世界なのに…)

家に帰ると、奏平は笑顔だった。ゲームでお兄ちゃんに勝ったらしい。

「あ、あいちゃん。グラタンやめてシチューになった」

「オーブンで焼く時間めんどくてな」

「相変わらずだね」

「お前香水くせぇけど、どこ行ってたんだよ」

「え…?…!」

抱きしめてもらったときにだと気づいた。

だけど口を閉ざした。

「あい…。その真希だっけ。香水くせぇやつとはいんなよ?

タチわりぃから」