「行くでー♪
バッター大きく振りかぶってー…
打ちました!」





ドガッ






すごい音がした…





でも……俺は痛くなかった





ゆっくり目を開けると俺の前に背中が見えた…



小さい背中だった…





俺はその背中の主が誰かすぐに分かった…




いつも見慣れている、
俺の大切な人の……









「小鳥遊!!」



バットを受け止めたのは小鳥遊だった




両腕で受けたらしくその部分が真っ青になってきた



幸い骨は無事みたいだ











「このばかが!
お前…まじで何やってんだよ!!」





「あはははぁ、ちょっと痛いかも…」


無理して笑おうとしているせいで顔がひきつっている

相当痛いはずなのに…




「ちょっとどころじゃねーだろうが!!
無茶しやがってバカだろお前!
ほんとバカだろ!!」



俺は動転して、痛がる小鳥遊を支えることしかできなかった




バットは折れていた
よほど強く打たれたのだろう





「おい、これやばいで…
逃げよら…」


上級生は焦った表情を見せ逃げようとしていた









俺は殴ったやつの胸ぐらを思い切り掴んだ






「逃がすわけねぇだろうが。
覚悟しろよてめぇ、ぶっ殺してやる」





「お、おい悪かったって
骨たぶん折れてないし、な?」




…のクズ、マジでぶっ殺してやる





俺は思いきり拳を振りかぶった。



…が俺の腕を小鳥遊に掴まれ殴るのを止められた




「…小鳥遊、離せ」




「いやや…」




「離せっつってんだろ!!」




怒り任せで大声が出てしまい小鳥遊の手がビクッと震えたが、俺の腕を掴む手の力は緩まなかった




「そいつのこと殴ったら橘もそいつとおんなじになる!
橘なんも悪ないのに今手出してしもたら橘も悪くなる!」









俺は怒りを抑え、胸ぐらをつかむ手を離した




殴った奴らはその瞬間ダッシュで逃げたが今はそれよりも…




「小鳥遊、腕見せろ」



こっちが最優先だ



「大丈夫やって!冷やしとくから!
ほれほれ、なんとも…!ってて…」


小鳥遊はそう言ってまた強がりで両手をプラプラ振って見せたが

木製と言えどバットであれだけ強く打たれておいて痛くないはずがない



むしろ平然としているのが不思議なくらいだ





「ばか!振んなっつの!
無理してこんな時まで強がってんじゃねーよ
早く保健室行くぞ」



そう言って俺は小鳥遊を抱き抱えた




「なぁ!?
やめれ!はずい!おろして!」



俺の腕の中で顔を真っ赤にしてバタバタ暴れる小鳥遊。


こんな時まで可愛く見えてしょうがない…


「暴れんな落ちるだろうが
こうしてりゃ分かんねーだろ
大人しくしてろ」



俺はそう言って小鳥遊の頭を自分の胸に押し当て、手で目を覆った




「……はい。」




諦めたのか大人しくなった。





…くそ、やっぱ可愛いな
襲ってしまいたい