「え~、俺のこと無視~??」

 「おつかれー、一条ちゃん」

頭を下げて、足を進める。

「一条、大変そうだな」

そう声かけてきたのは、 有島 花蓮。私の尊敬する先輩であり、検事事務官だ。

「有村さん!!  お疲れ様です」

長い綺麗な髪。白いスーツが恐ろしく似合っている。

「金沢は、ちゃんとやっているか?」

「はぁ・・・まぁ」

フム と満足そうに笑う有村さん。

「有村ぁ!!資料を頼む!」

がたいのいい、30半ばの男がヒョイッと顔を出す。
彼は、有村さんの担当検事

       伊々田 松陽。

「ではな」

「はい!!」

コーヒーを入れ、部屋へ戻ると・・・

「検事・・・読みましたか?」

「ひぃぃぃ!!!よ・・・読んだ読んだ読んだ」

「そうですか」

金沢の方を向く自分のせきへつく。


    万引き犯が来るまで、あと30分。